サヨナラの行方



誰が、本性を見た彼女とヤりたいと思うのか。

そうじゃなくてもヤりたくなくて、悠月を相手にしたのに。

コイツは、何も分かっていないらしい。


そう思っていると、そっと手を掴まれた。

そして、ギュッと握られた。

そのとたん、寒気がした。

気持ち悪いとさえ思った。

だから、何も言わずに手を離し、自分の部屋に戻った。


それから、彼女と関わりを持たないように、遅くまで会社にいて、家に帰ってもお風呂に入ったらすぐに部屋にこもって寝ていた。

彼女と話すこともなくなっていた。



「亜耶乃、和泉くんも忙しいんです。会社のためですから」



常務に用事があって来たけど、電話中だった。

部屋から漏れ聞こえる声は、確かにそう言っていた。

どうやら、彼女が父親に文句を言ったのだろう。

それを、たしなめられていたみたいだ。




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