サヨナラの行方
……なんて、ただの言い訳だ。
愛情がなくても、結婚を決めたのは俺自身なのに。
「和泉くん、これで回して下さい」
「あ、ありがとうございます」
上の空で座っていると、急に声をかけられて少し焦った。
「では、失礼します」
書類を受け取って、すぐに部屋を出ようとした。
「あ、和泉くん」
「なんでしょう?」
不意に常務に呼び止められた。
振り向いて常務を見たが、なかなか話そうとしない。
少し考えている風に見える。
「あ、イヤ……うん」