全力片思い
混乱する私を余所に、柳瀬は話を続けていく。

「それから気になってさ。……たった三日しか経っていないけど、なんつーか……好きになったみたいで」


息が詰まる。
なんて答えたらいいのか分からない。


だめだ、落ち着け自分。

一呼吸を置こうと思い、アイスココアを口に含んだ。


喉を潤おすと、少しだけ冷静になれた。

柳瀬は誤解している。

三日前タオルを掛けたのは私なのに。


あれ……? でもあのときの柳瀬は、ずっと伏せていて一度も顔を上げることはなかった。

じゃあどうして柳瀬はタオルを掛けてくれたのは、光莉だと思ったのだろうか。


「ねぇ、柳瀬。タオルを掛けてくれたのは、本当に光莉だったの?」

ちゃんと思い出して欲しい。

あの日、泣いている柳瀬にタオルを掛けたのは私。

光莉じゃないよ?
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