全力片思い
訴えかけるように瞳を見つめたまま問いかけると、柳瀬は即答した。


「当たり前だろ? 小松崎さんだ。……その、彼女からよく柔軟剤の香りがしていてさ。タオルからも同じ匂いがしたから」

「匂いって……」

変態発言に若干引きつつも、思い出す。


そういえばあのタオル、前日に急な雨で濡れて登校してきた光莉に貸したものを、体育祭の日に返してもらったものだった。

光莉が洗濯をして――。


それに柳瀬の言う通り、光莉はいつも思わずクンクンしたくなるほど、優しい香りを纏っている。

なんでもお気に入りの柔軟剤らしく、光莉愛用のものらしい。


そっか、光莉愛用の柔軟剤の香りがするタオルを掛けられたら、誰だって勘違いしちゃうよね。

相手は光莉だって――。


なにやっているんだろう、私。

三日前、精一杯の勇気を出したというのに。

全然柳瀬に届いていない。

むしろ勘違いされてしまう始末。
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