全力片思い
柳瀬の言う通り、私たちは昔からずっとこんな調子だった。

なんでも言いたいことを言い合ってふざけ合って。

だから見事に鉄壁な友達のレッテルを貼られてしまったのかもしれない。


「あっ、次の電車に乗らないと間に合わないし行こうぜ」

「……うん」


先に改札口を抜けた柳瀬に続いて私も定期を取り出し、改札口を抜けていく。

ホームへ行くとタイミングよく電車が到着し乗り込んだ。

朝の通勤ラッシュ時間。

席は埋まっていてドア側にふたりで寄りかかった。


うわぁ……ちょっとこれはヤバイかも。

肩と肩が触れてしまいそうな距離に、嫌でも心臓は早鐘を鳴らす。

けれどそれはきっと私だけなわけで……。


チラリと隣を見れば、やっぱり柳瀬はなにも感じていなそうだった。

光莉の前で見せるような焦った様子はない、至って普通。

柳瀬にとってきっと私は友達なんだ。

だって友達相手にドキドキすることなんてないでしょ?
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