全力片思い
でも光莉に対しては違う。
いつも柳瀬はドキドキしているんだ。

ダメだな、今日は楽しく過ごそうって決めてきたはずなのに、なに落ち込んじゃっているのかな。

柳瀬は光莉が好きなんだもん、当たり前じゃない。

首を横に振り邪念を払拭する。

気を取り直して自分から柳瀬に話しかけた。

「柳瀬、お弁当ちゃんと持ってきた?」

「なんだよ、急に当たり前なこと聞いてきて。持ってくるに決まっているだろ?」

不服そうに顔を顰める柳瀬。

「えー、だって柳瀬ってちょっと抜けているところがあるじゃない? うっかり忘れたりしていないかと思ってさ」

「はぁ? うっかりしているのは皆森の方だろ? ……公衆の面前で何度も篤志と手を繋いでいるらしいじゃん?」

「なっ、なによそれ!」

突然出た笹沼くんの名前にギョッとしてしまう。

しかもなに? 何度も手を繋いでいるなんて!
< 132 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop