全力片思い
違うよ、柳瀬。

私が好きなのは笹沼くんじゃない。……柳瀬なんだよ?

できるなら言いたいよ、柳瀬が好きだって。

中学二年生のときからずっと好きだったって。


でもそんなこと言われたって柳瀬は困るだけでしょ? 今、私と柳瀬の間にあるのは確かな友情関係なんだから。

それを壊したくないもの。


「分かったか、皆森? 困ったことがあれば、いつでも俺を頼れよな」

伸びてきた腕。

身長はあまり変わらないのに私より遥かに大きい手が頭に優しく触れた。

柳瀬は純粋に友達として私のことを心配してくれているだけ。

けれどごめん。

私のはその優しさが痛いほど苦しいよ――。

友達だから掛けてくれる言葉も、優しい手もすべてが苦しい。


「その代わり引き続き俺の相談にも乗ってくれよな? ……頼りにしているから」

なんて残酷な言葉だろうか。

好きな人に頼りにされて嬉しいはずなのに、柳瀬との距離はこの先もずっと平行線のままを意味しているのだから。
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