全力片思い
あの日も柳瀬はあんな風に迷うことなく私のことを抱き抱え、保健室まで走ってくれたのかな?

周囲の目が気にならないくらい、切羽詰まった顔をして。


さっきの柳瀬の顔を思い出すと、ズキッと胸が痛んでしまう。

柳瀬、すごく焦っていた。

見たことない顔をしていた。


好きな子が怪我したんだもの、当たり前な話。……当たり前な話だからこそ私には辛いことだった。


柳瀬と出会って一緒に過ごした時間は三年目になる。


今は私の方が光莉より柳瀬とたくさんの時間を過ごしてきた。

思い出もたくさんある。


けれどその思い出さえ、ひとつひとつ塗り替えられていってしまうのかな?


柳瀬と出会うきっかけとなったあの日の思い出が今、カレの中では光莉との思い出として上書きされちゃうのかな?


これからもそんな風に、柳瀬の中で私との思い出は消えていってしまう……?


そう思うと、胸が張り裂けそうなほど痛くて仕方ない。

こんな自分が嫌だ。

気持ちは封印するって決めたのに……。
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