全力片思い
あぁ、でも好きな人の頼みだからこそ断れないのかもしれない。

真実を話せないのかもしれない。

柳瀬を悲しませたくないから。

ガッカリさせたくないから。


「さっそくで悪いんだけどさ……」

そう言うと柳瀬は鞄の中を漁り出した。

そして私の前に差し出されたのはあの日、柳瀬の肩に掛けたタオルだった。


「これ、小松崎さんに返しておいてもらえるかな? ……まだ自分の気持ちに気付いたばかりで、自分で返す勇気が出ないんだ」

「……うん、分かった」


受け取ると柳瀬は笑顔で「サンキュ」と言った。



あの日勇気を出した“しるし”が、私の元へ戻ってきた。

洗濯されキレイに畳まれた状態で――。
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