全力片思い
「どうしてここに……?」

涙を拭っていた手は止まり、目の前の人物――笹沼くんを凝視してしまう。


「幸にいきなり今から告白してくるって聞いたから」

そういえば笹沼くん、図書室で柳瀬のことを待っているって言っていた気がする。


思い出している間に笹沼くんはゆっくりと近づいてくる。

そして私の目の前で立ち止まると、笹沼くんは表情を歪めた。


「泣くくらいなら、どうして幸の背中を押したわけ?」

「これはっ……」


慌てて頬を伝っていた涙を拭くものの、時すでに遅し。

拭っていた腕を掴まれてしまった。


「……笹沼くん?」


突然腕を掴まれ身体は固まってしまう。

そしてゆっくり視線を上げていく。


「幸……言ってた。皆森さんが背中を押してくれたおかげで勇気が出たって。なぁ、本当にこれでよかったのか?」


訴えかけてくる瞳は、苦しそうに見える。
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