全力片思い
「さっ、笹沼くん!?」

状況を理解してしまうと、嫌でもパニックに陥ってしまう。

咄嗟に離れようと試みるものの、すぐさま笹沼くんの腕の力が強まった。

まるで逃がさないと言わんばかりに。


どうして笹沼くんは急にこんなことを?

それよりも一旦落ち着け、私の心臓!!


突然の抱擁に自分でも驚くほど胸の鼓動が速い。

ドクンドクンと響く音は、確実に笹沼くんにも聞こえてしまっているはず。


そう思うと恥ずかしくて堪らなかった。

「強いよ、皆森さんは。自分の幸せより他人の幸せを願えるんだから」


頭上から聞こえてきた優しい声と、背中をゆっくり擦る大きな手。


びっくりして顔を上げれば、目を細め私を見つめる笹沼くんと至近距離で視線がかち合う。


「誰もいないし俺にまで嘘つくことないでしょ? ……泣きたいなら思いっきり泣けばいい」

「……笹沼くん」

「泣き止むまで、ずっとこうしてるから」
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