全力片思い
言い返すと笹沼くんは目を白黒させた。


「わっ、私だって最初は心から応援できなかったよ? ふたりがうまくなんていって欲しくなかった。……でもあんな柳瀬を見ちゃったら、居ても立ってもいられないよ。力になりたい。……笹沼くんは違うの? 光莉が辛いくせに無理して笑っている顔を見ても、平気でいられる? 見守っていようって言える!?」


話している途中で感情は昂ぶっていき、声を荒げてしまう。


笹沼くんは圧倒されたようにたじろいた。

その姿にハッと我に返る。


やばい、私ってば感情的になりすぎ。


笹沼くんには笹沼くんの考えがあるのかもしれない。

見守ることだって優しさだよね。


冷静になれば理解できる。でもいくら理解しても自分とは違う思考に、苛立ちを押さえることは出来なかった。


ちょうど降りる駅に到着し、ドアが開く。

「……っごめん、先に行くね」

後悔はない。

正直な私の気持ちだから。

でも笹沼くんの顔が見られなくて、逃げるように電車から降りた。


そのままホームを抜け改札口も駆け足で進んでいく。
< 218 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop