全力片思い
「電車の中の続きだけどさ、俺も光莉と幸がうまくいかなければいいなんて思っていないから」

「それはっ……!」


すぐに否定しようとしたけれど、笹沼くんに遮られてしまった。

「俺はただ、これ以上もう皆森さんに傷ついてほしくないだけ」


え、私……? 光莉じゃなくて?


戸惑い隣を歩く笹沼くんを凝視してしまう。

するとカレは真っ直ぐ前を見据えたまま話を続けた。


「皆森さんの気持ち、分かるから。……だからもう自分から傷つくようなことはしてほしくない。それにあのふたりなら、誰が見ても両想いだろ? 光莉がなにを思って幸の告白を断ったか分からないけど、今はそっとしておくべきだと思ったんだ。……光莉ならきっと、自分の力ではどうすることも出来なくなったとき、頼ってきてくれると思うから」


「笹沼くん……」

「こっちこそさっきは、言葉足らずで悪かった」

ふとこちらを見た笹沼くんは、申し訳なさそうに眉を下げていた。


「ううん、そんなことないよ! 私のほうこそごめんなさい。……ちゃんと最後まで話を聞かず感情的になっちゃって」
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