全力片思い
ドキドキしながら待っていると、光莉の躊躇いがちな声が聞こえてきた。

『……萌?』

「あっ、光莉? あの、手紙を届けにきたの」


緊張はピークに達し、声が裏返ってしまう。

笹沼くんから預かった手紙をインターホンに向ける。


『ありがとう。でもごめん、体調悪くて。……ポストに入れておいてもらえるかな?』

「え……ポスト?」

言われるがままポストの方へ視線を向けた。


それはつまり、今は私と会いたくないってことだよね?

予想外の展開に言葉を失ってしまう。


会いにくれば光莉は家に招き入れてくれて、どうして学校を休んだのか、どうして柳瀬からの告白を断ったのか話してくれると思っていた。


『ごめんね、萌』

光莉の声で我に返る。


ショックだけど、でも私だって光莉に話せないことがある。

それだけ光莉は今、なにかに悩んでいるのかもしれない。

そう思うと、ここで引き下がるわけにはいかないよ。
< 227 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop