全力片思い
柳瀬……私は友達だと思っていない。

出会った日からずっと好きな人なんだよ?


「おーい、皆森」

「っもーうるさい! 今行くから」

それでも私は柳瀬を拒めない。

友達でもいい、そばにいられれば幸せだと思っていたから。


隣に並び歩き出すと柳瀬は「遅刻したら皆森のせいだ」なんて言ってきた。

「はぁ? まだ全然余裕あるじゃない! オーバーすぎる」

「分からないだろ? 皆森の足が遅いから遅刻する可能性大ありだし」

「なにそれ!」

ジロリと睨めば、柳瀬はニヤニヤと笑い出す。


いつもの私たちだ。

何気ないやり取りに幸せを感じていた。


でも今は違うよ。

初めて知った。
柳瀬と友達でいることが、こんなに苦しいなんて。

柳瀬に好きな人がいる。
それなのに私とは友達……それがこんなにも苦しいなんて――。
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