全力片思い
だけど朝から立て続けに嫌なことばかり起きたんだもの。

きっとこれ以上嫌な思いは、今日はしないはず。――そう、思っていたんだけど……。


「よーし、みんな移動終わったな」

学級委員長の大きな声が騒がしい教室内に響く。

「うわー、やっべ。マジで神席!!」

「幸うるさい」


テンション高めに喜ぶ柳瀬に笹沼くんは通常運転。

「よろしくな、皆森! ……色々と」

前の席から向けられた、柳瀬の意味深な含み笑いに苦笑いしてしまう。


朝のHR時間を利用しておこなわれた席替え。

光莉の分は私が引いたんだけど……。


なにこの席。
神様ってば、今日はとことん私を苦しめてくる。

朝だけでは足りなかった?
充分辛い思いをしたのに。


私の新しい席は真ん中の列、前から二番目。
隣の席は苦手な笹沼くん。


私の前の席は光莉。……そして斜め前には柳瀬。


体育祭が終わったばかりの十月一日。

今日から冬休みまでの間過ごす新しい席。

それは私にとってとても長く、辛い日々のはじまりだった。
< 27 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop