全力片思い
そう思うくせに自分から挨拶できない私。

それは私から挨拶をしても、笹沼くんは返してくれない気がするから。

そんな状況になったらますます気まずくなる。

椅子に腰かけ、あと数分で始まるHRを待つ。


先生早く来てくれないかな。

横を見ず、ただジッと前を見据え待つこと数十秒。

「おはよう皆森! 今日は遅かったじゃん」

「柳瀬……」


後ろ向きに座りいつもの屈託ない笑顔で私を見つめてくる。

「もしかして今日も小松崎さん休み?」

「あっ、うん……」

「そっか、残念」


オーバーにがっくり項垂れる柳瀬に、ついチラチラと隣の席の笹沼くんを見てしまう。

やっ、柳瀬ってばいいの?

笹沼くんの前で堂々としちゃっていて。


自分のことのように気が気ではなくなってしまっていると、私の様子に気づいたのか柳瀬はあっけらかんと言った。

「あっ、大丈夫。篤志も俺の気持ちは知っているから」

「え、そうなの!?」
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