全力片思い
驚き柳瀬と笹沼くんの顔を交互に見てしまうも、柳瀬はびっくりする私を見て笑い、笹沼くんはまるで聞こえていないかのように、本の文字を追っている。


やはり笹沼くんは私のことが嫌いな気がする。

絶対今の話、聞こえていたはずだよね?

それなのに微動だにしないなんて……。


ヒシヒシと自分が嫌われている感を感じてしまう。

「席替えで協力者が後ろにふたりもいるかと思うと、マジで心強いよ! ふたりとも、頼りにしているからな!!」


疑うことを知らない目で見つめられると、胸がチクリと痛む。

「うっ、うん! もちろん」


それでも今さら「柳瀬が好き。だから協力なんてできない」とは言えるはずもなく、笑顔で肯定するしかなかった。

「篤志も頼むな!」

白い歯を覗かせて笹沼くんの顔を覗き込む柳瀬。

けれどカレは我関せず状態で「邪魔するな」と叱咤するだけ。


素っ気ない態度でも、柳瀬は笑顔を絶やさない。

「まったくいつも素直じゃねぇんだから」
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