全力片思い
笹沼くんの言っていることが理解できていない私に分かるように、カレは言葉を付け足した。

「光莉の家に届けてくれって頼まれたんだ。……だから皆森さんも一緒に行かない? 光莉も喜ぶだろうし」


無表情で淡々と話される内容に、目が点状態になる。

そもそも笹沼くんに話しかけられたことも初めてなわけで。

それなのにつまり、今から一緒に光莉の家に行こうってことだよね?


え、笹沼くんは私のことが嫌いなんじゃないの?

気遣いは嬉しいけど、嫌いな相手と一緒に帰るなんて嫌じゃないのかな?


混乱と動揺で唖然としてしまっていると、なにも言わない私に痺れを切らしたのか、笹沼くんは小さく舌打ちをし、私の腕を掴んだまま歩き出した。

「なにも言わないってことは肯定ととっていいんだろ?」

「……えぇっ!? あっ、ちょっと笹沼くん!?」


強引なカレにますます私の頭の中は混乱していく。

そんなことお構いなしに笹沼くんは私の腕を引いたまま、大股で進んでいくものだから、たまったものじゃない。
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