全力片思い
言われなくなって光莉の家には何度も行ったことがあるし!

一々案内されなくても分かる。

感情は素直に顔に出てしまっていたようで、笹沼くんも負けじと顔を顰めた。


「なに? 不機嫌そうな顔をして。無理やり連れてこられて迷惑だった?」

「……っ! そんなわけじゃないけどっ……!」


そんなわけない。

私だって光莉のこと心配だったし。……でも、こんな形でいきなり連れて来られて光莉に会うとなると、身構えてしまうのも事実。


言葉を濁してしまうと、笹沼くんは足を止め私を見据えた。

「それとも光莉には会いたくなかった? ……会えない事情でもあるの?」

素直な身体は反応してしまう。


「別にそういうわけではっ……!」

必死に言い訳をした後に気づく。

動揺していることがバレバレで、これでは「図星です」と言っているようなものだと。

「早く行こう!」

誤魔化すように先に歩き出して数歩、また笹沼くんに腕を掴まれ動きを制止させられてしまった。
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