全力片思い
そもそもあの場面を見ていなかったら、タオルを掛けたのが私だって分からないことだ。

じゃあ笹沼くんはあのとき、私の知らないところで一部始終を見ていたんだ。


実感すると急激に恥ずかしくなっていく。

あのときの私はとにかくいっぱいいっぱいだった。

顔も赤かっただろうし、行動もぎこちなかったように見えていたはず。


なら気づかれてしまった……?
私の気持ちを笹沼くんに。

なんて言ったらいいのか分からなくなる。


いや、私が勝手に気づかれたと思っただけで、そうではないのかもしれない。

第一笹沼くんって恋愛にも私にも興味ないだろうし!!

理由を並べて必死に自分に言い聞かせていると、笹沼くんは掴んでいた私の腕をゆっくりと離していく。


初めて真正面で見る彼の素顔――。

真剣な面持ちで見つめられると、無意識に胸が高鳴ってしまう。

今なら少しだけ分かるかもしれない。

笹沼くんがカッコイイと言って騒ぐみんなの気持ちが。
< 43 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop