全力片思い
「これ、小松崎さんが休んだ授業分のノート。写したからもしよかったら貰って」

「え……嘘、いいの?」

驚き目をパチクリさせる光莉に柳瀬は照れ臭そうに無意味に頭を掻いた。


「ほら、小松崎さんいつもバイトで忙しそうだったからさ! その……隣の席のよしみってやつで」

「アハハ」とぎこちなく笑う柳瀬に胸がズキンと痛んだ。


「ありがとう柳瀬くん。すごく助かる! ノートは萌に見せてもらって休み時間中に写しちゃおうと思っていたから」

心底嬉しそうに微笑む光莉を目の前に、柳瀬の耳はみるみるうちに赤くなっていく。


どうしよう、さっきから胸がズキズキ痛んで仕方ない。

覚悟はしてきたけれど、無理かもしれない。

これから毎日、ふたりのこんなやり取りを見なくてはいけないなんて――。

心臓を鷲掴みされたような痛みが全身に駆け巡っていく。

柳瀬のそばにいられればそれでいいと思っていた。……でも違ったのかな? 間違いだった?
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