全力片思い
ちょうど担任が教室に入ってきて会話は途切れ、ふたりとも前を見据えた。

すると隣で本を読んでいたはずの笹沼くんが、ポツリと呟いた。

「そんなに辛いなら言えばいいのに」と――。


先生が話を進める中、チラリと横を見る。

けれど笹沼くんは何事もなかったかのように前を見据え、先生の話に耳を傾けていた。


信じられない……! 笹沼くんってば昨日から一体なんなの!?


すぐに私も目線を前に向けるも怒りはなかなか収まりそうにない。


笹沼くんに柳瀬を好きなことがバレて本当に最悪!

気持ちを知られているってだけで、どうして昨日からあんまりなことばかり言われなくちゃいけないのだろう。


HR中ずっと笹沼くんに対する怒りを必死に押さえ続けていた。



それから授業が始まり、休み時間となっても柳瀬が光莉に話しかけることはなかった。

休み時間になるとクラスメイトの方へ向かい、いつものように他愛ないことで盛り上がっていたから。

笹沼くんもまた授業中はもちろん、休み時間も一切私に話し掛けてくることは一度もなかった。
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