全力片思い
「それが相手にとっても自分にとってもいいと思うから。……でも皆森さんは違うんだろ？　だから今もウジウジ悩んでいる」

「それは……」


「伝えるか伝えないか、どっちかにしたら？　……でないと周りも迷惑だから」

きっぱり言うと、笹沼くんはそれ以上言うことはないと言わんばかりに私に背を向けた。


「先に戻っているから。……ふたりには皆森さんは途中で先生に捕まったって言っておくから、飲み物買ってから来るといいよ」

一方的に言い笹沼くんはさっさと出て行ってしまった。


ガタンとドアが閉まる音が異様に響く。

教室の外からは騒がしい雑音が耳に届く。


けれど私の頭の中は、笹沼くんの言葉で埋め尽くされていた。


笹沼くんが光莉のことを好きってこと。

そして、カレが私に言ったこと。

『伝えるか伝えないか、どっちかにしたら？　……でないと周りも迷惑だから』

笹沼くんの言う通りだと思う。

現にさっきの私の言動は、迷惑をかけたに違いない。

でもだからといって、すぐに割り切れるわけがない。

現実を受け入れることができるわけないじゃない。
< 66 / 270 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop