全力片思い
でも柳瀬と出会った日から今までのことを思い出すと、間違っていたのかもしれないと思う。

だって柳瀬だよ?

例え私が告白して気持ちに応えられなかったとしても、柳瀬は私を避けたりしないはず。

きっと柳瀬のことだ。

今まで通りに接してくれたはずだよ。

柳瀬のことが好きなら分かるはずだったのに――。


今さら気づいたのは、きっと考えることもしなかったからだ。

自分が柳瀬に告白することも、告白した後のことも。

どうして勇気を出さなかったのかな?

こんなことになるなら、もっと早く告白しちゃえばよかった。

自分の気持ちを伝えていれば、心から柳瀬の恋の応援をできていたはず。

それなのに今の私はなに?

好きって言うこともできない。柳瀬の幸せを願うこともできない。

笹沼くんのように、柳瀬への恋心を封印することもできる自信がない。


「どうしたらいいんだろう、私……」

楽しそうに肩を並べて笑って写る自分と柳瀬の写真に、ポタポタと零れ落ちていく雫。

誰もいない家の中でしばらくの間、声を押し殺して泣いてしまった。
< 82 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop