全力片思い
「なぁ、大丈夫か?」

「え、なに急に」

やぶからぼうに言われても、なにに対しての大丈夫なのか分からない。


もしかして今朝の噂のこと……?

答えが分からずなんて答えたらいいのか迷っていると、柳瀬は声を潜めて話し出した。

「いや、なんか今日ずっと元気がなかったからさ。……皆森が元気ないと調子狂う」

「柳瀬……」


意外なカレの本音に目が点になる。

柳瀬は照れ臭そうに頭をガシガシと掻きながらも、尚も話を続けた。


「もしかして今朝俺が余計なことを言ったせいかと思って。……俺が言わなければ気づかなかっただろ? それで嫌な思いさせちまったなら、悪かった」

頭を下げ出した柳瀬にギョッとし慌てて声を上げた。


「どうして柳瀬が謝るの!? これだけ学校中に広まっちゃっているんだもの。柳瀬に聞かなくてもすぐ耳に入っていたよ。……それに私は元気なくないから」


いつになく弱腰で落ち込んでいる柳瀬を安心させたくて笑って言ったものの、柳瀬の表情は晴れない。

それどころかますます曇っていく。
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