全力片思い
「うん、ありがとう。……本当に辛いときは頼りにするから」

自分の気持ちに蓋をして、精一杯の笑顔を柳瀬に向ける。


ごめんね、柳瀬。

私……嘘ついている。

柳瀬は私のこと友達だって言ってくれたけど、私は違うの。好きなの。


「おう、頼れ頼れ」

柳瀬の笑顔が眩しいよ。
どうして私、柳瀬の友達になっちゃったのかな?

嫌なわけじゃない。……けれど私がなりたかったのは柳瀬の彼女だから。


「幸」

「あっ、終わったか? んじゃ帰ろう」

先生との話が終わったようで、笹沼くんが戻ってきた。

すると柳瀬は立ち上がり「また明日な」と言いふたりで教室を出て行った。

最後に笹沼くんはチラリと振り返り私を見て――。


手を振って見送っていた私の顔はふたりの姿が見えなくなると、次第に色を失くしていく。

手の動きは止まり、もう片方の手でギュッと握りしめた。
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