aeRial lovErs
第一会議室へ近付くにつれ、ちらほら集まる集団に遭遇する様になる。

「格納庫の新人の機体みたか?」

愚問だ。私は、格納庫に着く前に、当の菱沼に止められたのだから。

私は、首を横に振り否定の意を示す。

「新型のSW-24、良い機体だぞ、夜戦用の黒い塗装もなかなか渋いな。」

「そうか?そりゃ良かった、ほら着いたぞ」

私は、菱沼の営業が始まる前に話題を反らす。

菱沼の顔が不機嫌になるが、自業自得だ。

会場を見渡した私達は、中ほどの席を選び腰を下ろす。

予告の時刻が迫るにつれ、人波は加速し、あっと言う間に席は、ほぼ埋まる。

「もう一つ驚く事が有るぞ。」

菱沼が前を向いたまた呟く。

「なんだ?」

「まあ、すぐ分かるさ」

余り愉快そうではない菱沼が付け加える。

「この時代珍しく無いが、お前のトラウマに触れるかもしれんな。」

私が菱沼の方に向いた時、会場が静かになる。

支部長が姿を現したのだ。

続いて、姿を見せた制服は、髪を短くはしているが明らかに女性であった。

私の胸に小さい痛みが走る。

この業種に女性は少ないが、別に私はその事で偏見は持っていない。

痛みの理由は・・・3年前、別部隊との合同出撃した時の事を思い出したからだ。

その戦闘で、別部隊にいた恋人が撃墜されたのだ。

私の目の前で・・・そう、黒い兎をペイントした奴に。

支部長の、演説が終わり、女性がマイクの前に立つ。

「高崎 出流(いずる)役職は班長になります。」

その後、私は、思い出してしまった恋人の事をぼんやり考えていた。

余計な事を言った菱沼を軽く呪いながら。
< 10 / 54 >

この作品をシェア

pagetop