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操縦士、高崎はタラップを軽やかに降りるとヘルメットとマスクを外す。

「データロガーの準備できています。」

若い整備士が高崎からヘルメットを受け取りながら伝える。

「おい新入り、そっちだ。」

整備の指示を終えた菱沼が高崎を呼び寄せながらこちらに歩いて来る。

お世辞にも人付き合いが上手いと言えない私としては、出来れば関わりたくない所だ。

その場を離れる為に歩き始めた所で声をかけられた。

「三島 甲斐人(みしま かいと)・・・さんですか?」

高崎の問いかけに私は、心の中で舌打ちする。

「そうだが」

「高崎 出流と言います。」

改めて見ると、かなり若い事に気付く。

航空機を操る腕は、経験では無く才能なのだろう。

「そいつは、もう情報屋になってるよ。」

菱沼が珍しく気を使う。

「こちらに来て知りました。一緒に飛べなくて、残念です。」

「ところで、二人は知り合いかい?」

私は菱沼に向かい首を横にふる。

「いえ、学生の頃この基地の公開飛行演習で飛ぶ三島さんに憧れて戦闘機乗りを目指しましたので・・・」

「残念ながら、もう私は戦闘機を降りている。では、用が有るので失礼する。」

「すみません。」

謝る高崎を残し歩きながら、私はトラブルの足音を聞いた気がした。
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