aeRial lovErs
「いやぁ、助かったよ。」

菱沼は、満足げに椅子に置いた紙袋を撫でる。

すでにプレゼントを買った我々は、デパートの食堂街で昼食を食べている所だ。

「いえ、こちらこそご馳走になってしまって。」

そういう高崎の前には、カルボナーラの皿が置かれている。

ちなみに菱沼の前には、ハンバーグランチが、私の前には、魚のフライがメインの日替りランチがならんでいる。

「それにしても人が多いな。」

この雰囲気に慣れていない私は、若干人に酔い気味だ。

「今日は休日ですしね、あまり街には来ないんですか?」

「あまり来ないな。」

思えば買い物に出るのもずいぶん久しぶりだ。

「たまには出掛けろよな。」

菱沼は呆れ顔だ。

「女でも出来れば変わるだろうけどな。」

「余計なお世話だ。」

「三島さん彼女いないんですか?」

高崎がこちらを凝視している。

「まあ、そうだが。」

正体不明の迫力に軽くたじろぐ。

「へぇ、そうですか・・・そうなんだ。」

高崎は一人納得している。
「俺、席外そうか?」

菱沼が楽しそうにこちらを見ている。

「なんで?」

尋ねた私に、二人が複雑な顔をする。

「いや、俺が悪かった。」
そう謝ると菱沼は、食事を再開する。

高崎もすでにパスタをフォークに絡めている。

「お前も早く食え。」

何だか釈然としない気持ちのまま私はフライにナイフを入れた。
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