aeRial lovErs
「三島さーん。」

通路の向こうから朝の低い陽光を浴び高崎が走って来る。

街での一件以来、高崎はすっかり私と菱沼に懐いてしまった。

菱沼は、戦闘機のセッティングの意志疎通もスムーズなのでご機嫌の様だが。

「ああ。」

私は、軽く片手を上げて答える。

「昨日は、中央までの護衛任務だったんですよ。」

「総理を乗せた奴の護衛、高崎だったんだな。」

この近辺に出来た施設の視察に総理大臣が来ていたのだ。

その総理が中央に帰ると云うので、この基地から護衛を付ける事になっていたのだが、どうやらメンバーに高崎が入っていた様だ。

「中央で泊まらなかったんだな。」

「ええ、私は別に良いけど、泉谷さんと桂さんは残念がってました。」

高崎はクスリと吹き出す。

泉谷も桂も高崎の様な天性の才能と直感で乗るタイプでは無いが、経験を積んだ腕の良い乗り手だ。

「あっ一応、機密事項だったけどもう大丈夫ですよね。」

「まあ、そうだろうけど、感心はしないな。」

「すみません。」

「ま、良いだろう。と言っても私には、何の権限も無いがな。」

「有り難うございます。」

高崎がふわりと微笑む。

「今日の勤務は、何ですか?」


「実は今日、休みを貰っているんだ。」

「そうですか、でも制服ですよね?」

「ん?ああ、ちょっとした所に行くから。」

「そうですか、ではを気を付けて。」

引き際の良さに私の中で高崎の評価が一つ上がる。

深追いせず、引き際を見極める目を持つ事は、戦闘機乗りには重要な事だ。

まあ、こじつけかも知れないが。
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