aeRial lovErs
訝る私に菱沼はニヤリと笑う。

「当然だ、メンバーの機体を誰が整備してると思っている?バックアップしろとよ。」

なるほどだ。

「なら操縦桿の遊びをもう少し小さくしてくれ。」

私の要求に菱沼が眉をひそめる。

「機体が付いていかないぞ。戦闘は戦闘屋にまかせておけ。」

「でしゃばるつもりは無いんだが、何と無く。」

私の言葉に菱沼は意外にも考え込む。

「そうだな・・・」

「いや、だから何と無くだ。」

「その何と無くが大事なんだ、まあ人にもよるが。」

菱沼は、さらに考えた後によしと頷く。

「今回は危険な匂いもするし、万一逃げ遅れたら回避も必要になる。」

そうなのか?

「ただ、旋回性も含めて気休めにしかならないからな。」

「わかってる。」

菱沼は、自分の整備した機体に対しては謙遜も過大評価もしない。

言葉通り気持ち改善されるはずだ。

「ありがとう。」

「ばか、仕事だ仕事。」

菱沼は、タバコを揉み消すとすたすたと立ち去った。

私は、改めて信頼の置ける整備士に出会えた事に感謝した。
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