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『おっ、おいでなすった様だぞ。』

菱沼の言葉に滑走路脇のゲートの方を見ると三台の黒塗りの高級外車が通過していた。

格納庫に高級外車が入ると入り口のシャッターが一度閉められた。

『管制官、こちら乙3、離陸準備を開始いて良い・・と受けとめて良いでしょうか?』

『間もなく出発になる、各機、離陸準備にかかれ。』

高崎の問いかけに対する管制塔からの返答は肯定。

離陸の順番は私が一番だ。

「乙7、位置に着きます。」

『了解、許可する。』

私は一つ深く呼吸してからスロットルを僅かに開ける。

震動が背中に、腰に、操縦桿を握る手に伝わる。

全ての震動は、会話と言うより、神経の伝達だ。

機体の鼓動が集中力を妨げない範囲で最適に伝わって来る。

菱沼の自信は腕に基づいた、確かな物だ。

逆に出来ない物はキッパリと言い放つ。

だから私は、ギリギリのラインを飛ぶ事が出来る。

私が滑走路に着いた時丁度格納庫のシャッターが開き始める。

私が離陸した後は、乙1から乙4が甲の前方に、乙5と乙6が後方に配置される予定だ。

『甲、準備完了、乙7、離陸を許可する。』

「了解。」

スロットルを開けるとグンと体に重力がかかり始める、軽い浮遊感を感じる。

操縦桿を手前に引くとフワリと機体が浮いた。

そうして、私は又は空へと飛び立った。

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