aeRial lovErs
少ない機数だが戦況は徐々に混乱しはじめている。

『乙2被弾、短距離なら飛行可能につき離脱する。』

乙2は各務という若いパイロットが乗っていたはずだ。

護衛対象である、甲に付くため水平にループしていた私の頭上を尾翼が損傷した乙2が通過する。

高度を落しながら離脱する乙2を乙3の高崎が援護している。

私は、座標と被害機の情報をセットで発信する。

かろうじて飛んでいるが、長距離の飛行は無理なはずだ。

『乙3一機やった。』

乙2を深追いしていたのを高崎が撃墜した様子だ。

フラフラと飛んでいた敵は、途中で不自然に爆発する。

自爆、吐き気がするやり口だ。

『なんで!』

上手く撃ったと思った高崎が、驚きの声を上げる。

そういえば、高崎は実戦は初めてだ。

「乙3、集中切らすな、無理なら乙2のサポートで離脱しろ。」

『大丈夫です。』

帰って来た声は予想以上に冷静だ。

レーダー上で高崎のマーカーが次の敵を求め踊る様に反転する。

「乙3、無理はするな。」
『了解。』

高崎の応答を聞きながら、甲の斜め後ろに付く。

しかし、高崎が次の目標に定めた敵を見て、思わず叫ぶ。

「3、そいつから離れろ!」

高崎に後ろを取られてなお余裕の飛行をしている、或いは、わざと取らせたのは、黒兎だった。
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