aeRial lovErs
その夜、基地はいつもより騒がしく、滑走路の片隅を僅かに見て取れる私の部屋からも何人かの誘導員の姿が確認出来た。

理由は、本館休憩所に居た時に、庶務課の安田が嬉しそうに教えてくれた。

「隣の基地から装攻部のエースが転属してくるみたいですよ。」

との事だ。ちなみに、装攻部とは、主に攻撃を目的とした航空機を操るパイロットが所属する部署だ。

私は、今は空域諜報部に所属している。

だから、他部署に誰が来ようとも関わりの無い話しではある。

しかし、新型戦闘機の夜間飛行試験とデータ取りを兼ねて22時という時間らしいが、私なら断りたい所だ。

夜間飛行すると云うテクニックの面では無い、就任方法として先方の基地へのアピールがオーバー過ぎるからだ。


気が付けば、戦闘機の飛行音が聞こえ始めた。

闇夜に遠く、戦闘機の両翼で点滅する光がみえる。

私は、やがて来る騒音に備え、二重硝子の窓を閉める。

しばらくかけて、大きくなった黒い影は、やがて宿舎の防音壁に隠れて見えなくなった。

明日は、午前からのフライトになる。

まだ早い気がするが、今日は、もう眠るとしよう。

新任者の挨拶に巻き込まれる前に、格納庫に向かおうと心に決めて、私はベットに潜り込んだ。
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