aeRial lovErs
翌朝、格納庫へと続く通路で私を待っていたのは、仏頂面の菱沼だった。

格納庫から、本館の方へと通路を歩いていた菱沼は、私を見つけるとポケットを探り、何かを投げて寄越した。

昨日持ち逃げしたタバコケースだ。

重さからして、中身はどうやら増えている。律儀な奴だ。

「係長以上、新任の挨拶参加、畜生め。」

菱沼の忌々しげな呟きを聞いて私もため息がこぼれる。

「先手をうたれたか。」

菱沼が本館に向かっていると云う事は、すでに格納庫に通達が回っているのだろう。

連絡が来る前に、操縦席に着いて待機しようと思ったが、もくろみは、失敗に終わった。

「お前の変わりに、高橋が使命されたから、今日は1日地上勤務たぞ。」

不運が不運をよんでしまった。

素直に諦めた私は、会場を聞く。

「第一会議室?」

私の問に菱沼が答える。

「第一会議室。」

短いやり取りで行き先を確認した私は、第一会議室の有る元来た方へと引き返す事にした。

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