たったひとつの恋をください
蓮がさりげなく手を引いて、人混みのなかを誘導してくれる。
鳴りだした心臓の音は、どんどん大きく、速くなっていく。繋いだ指先から、この鼓動が伝わってしまうんじゃないかって心配になるくらい。
それでも、もう止められないんだって、とっくにわかっていた。
君の声が、言葉が、他の人と全然違って響くのも。
その背中をずっと見つめていたいと思うのも。
気づいてたんだ。きっと、太一に言われるよりも、ずっと前から。ただ、気づかないふりをしてただけで。
ーー私は、蓮が好きなんだって。
もう自分では止められないくらい、君への気持ちがどうしようもなく大きくなってるんだって。