たったひとつの恋をください




繋いだ手が、ものすごく熱い。


だけど汗とか、もうそんなことを考えている余裕だって、全然なかった。


屋台の幻想的な灯り、行き交う人々の雑踏が、私の中の理性をどんどん消し去っていく。


考えてはいけないことを、考えてしまう。


ーーこの手が、私だけのものだったらいいのに。



わかってる。そんなのあり得ないってこと。


だから、あと少しだけ。


あの子のところに帰る、あと少しの間だけ。


繋いだこの手を、離さないでいて。




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