たったひとつの恋をください




「◯◯市から転校してきました、塩屋七瀬です。よろしくお願いします」


ぺこりと頭を下げながら、私は教壇の下で、ギュッと手を握りしめる。


……よし、噛まずに言えたっ!



ホッとしたのもつかの間。


「えーとじゃあ、席は一番後ろの須藤の隣な」


藤本先生が、とんでもないことを口にした。


「え……っ?」


差されたほうを見てみる。


窓際の一番後ろ。蓮の隣に一つだけ、ぽっかりと空いた席がある。


う、嘘でしょ……。




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