たったひとつの恋をください




「じゃあ、九時から始業式だから。遅れるなよー」


藤本先生が教室を出て行った瞬間。


数人の女の子たちが、わらわらと私の周りに集まってきた。


「塩屋さんよろしくねー。わかんないことあったら聞いてね!」


「部活とか決めてる?よかったら今日見学来ない?」


「なんて呼べばいいー?」


自己紹介に次ぐ恒例イベントーー質問責め。


はっきり言って、これが一番ニガテだった。


「え、えっと、あの……」


混乱して、頭がぐるぐるまわって、なんて答えたらいいのか全然わからなくなる。


助けを求めて隣を見るけれど。


「…………」


って、寝てるし!


気持ちよさそうな寝顔に、はあ、とため息。


ちょっとは助けてくれたっていいのに。なんて、理不尽な文句を心の中でぼやいてみる。



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