たったひとつの恋をください




何がおかしいんだろう。影でコソコソ人の悪口を言って、楽しそうに笑って。


自分の言葉で人が傷つくことなんて、考えたこともないみたいに。


「ね、ナナちゃんもそう思わない?」


一人が私の顔を覗き込んで言った。



ーーそんな汚い笑顔を向けるな。



ギリ、と歯を食いしばった。


こんなとき、どう言えばいいかなんて、わからない。


だけど。大事な人を侮辱されるのは、黙って見ていられなかった。


「思わないよ。全然」


そう口にした途端、目の前の三人の表情が固まるのがわかった。


わかっても、やめなかった。


「琴里はそんな子じゃない。少なくとも、あなたたちよりずっと心が綺麗だよ」


「……は?なにそれ?それ、本気で言ってんの?」


一人が言った。口元に歪んだ笑みを浮かべながら、でも目は全然笑ってなくて、思わず怯みそうになってしまう。




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