たったひとつの恋をください




「つか、あんただって知り合ったばっかでしょ?浅い付き合いでよくそんなこと言えるよね」


「し、知ってるよ。料理上手で、勉強がちょっと苦手で、たまにドジで、でもすごく優しくて、周りのことちゃんと見てて……」


それから、一人ぼっちの私を見つけてくれた。声をかけてくれた。


そんな優しさに、私は救われたんだ。


確かに知り合ってまだそんなに経ってない。知らないことだって、たくさんあると思う。


だけど、この短期間で知ったことだって、同じくらいたくさんあるから。


「ふうん。でもそれってさ、表面上のことだけじゃん。猫かぶってるんだよ。そのうち本性出すって」


「そんなこと……」


ない、って最後まではっきり言えなかったのは、やっぱりどうしたって自信が持てなかったから。


今まで友達がいなかった私。人の気持ちをわかろうとすらしなかった私に、表面上じゃないことなんて、わかるはずがない。


それに今は一緒にいたって、この先のことなんて、もっとわからない。そのうち私のことが嫌になって離れて行くかもしれない。


人の気持ちなんて、それくらい簡単に変わってしまうものだから。



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