たったひとつの恋をください

「やっぱり言い返せないんじゃん」


黙り込んでいると、目の前の彼女が、してやったりとばかりにニヤリと笑った。


「だからさ、今のうちに距離置いたほうがいいって忠告してやったんだよ。だってナナちゃん、明らかに浮いてて可哀想なんだもん」


「可哀想……？」


「そうだよ。まさか自分も人気者になれたとか勘違いしてないよね？蓮たちだって、仕方なく一緒にいるだけに決まってるじゃん」


楽しそうに。クスクス笑いながら。真っ黒な感情に塗りつぶされた言葉を、惜しげもなく吐き出す人たち。


ーーそんなことない。


そうはっきり言い返したいのに、声にならない。


だって、琴里や蓮や太一の本当の気持ちなんて、私は知らない。


もしかしたら本当に、仕方なく一緒にいてくれるだけなのかもしれない。


私は、本当に、必要なのかな。


あの場所にいて、本当にいいのかな……？