たったひとつの恋をください
親が厳しい、っていうのは、実を言えば嘘なんだけど。
そもそもケータイが欲しいなんて言ったことないし、だからダメとも言われてない。
今までは必要なかったし、クラスの子にそんな風に言われることだってなかったから。
「じゃあさ、買ったら教えてねー」
「うん、もちろんだよ」
そのときちょうどチャイムが鳴って、ホッと胸を撫で下ろす。
ふう、と息をつくと、いつの間にか顔を上げていた蓮が、こっちをじっと見ていた。
「……な、なに?」
「ケータイ、買えばいいのに」
「な……っ、盗み聞き?趣味悪いよ」
「声がデカイから勝手に耳に入ってくるんだよ」
「あっそう。だから、親が厳しいからダメってさっき……」
「嘘だろ?それ」
蓮が言いながら意地悪な笑みを浮かべるから、ついドキッとしてしまう。
「な、なんで」
「だってそんな厳しい親なら、娘を夜一人で出歩かせたりしないだろ」
「…………」
悔しいけど、まったくその通りだから言い返せない。