たったひとつの恋をください
お母さんは厳しいどころか、私のやることにほとんど口を出さないし、勉強のことですらほとんど何も言ってこない。
きっと自分のことで忙しすぎて、私のことに気を配ってる余裕なんてないんだろう。
「買えばいいのに」
「買わない。買ったって蓮には教えないし」
……ああ、私、また可愛くないこと言ってる。
自分で言っといて情けなくなりながら、でも気づけば勝手に熱くなってる顔を見られたくなくて、ふいと顔を背ける。
ダメだなあ、っていつも思う。
学校が始まってもう一ヶ月も経つのに、全然この状況に慣れてなくて。
ーー隣に君がいることに。
ふと隣を見れば君がいて、笑いかけられればそれだけでその日一日嬉しくなって。
早く慣れなきゃと思いつつ、だけどいつだって無意識に意識してしまう。どこにいたって、君の姿を目で追ってしまう。
鐘が鳴って、ホッとした。前だけ見てればいい授業中が一番楽だなって気づいたのは、つい最近のことだ。