たったひとつの恋をください




食べ終えて、食器を片付けながら、メモも捨てようかと思ったけど、ふと思いついて、棚からペンを取った。


お母さんの文字の下に、ひっそりと書き足しておく。


『ケータイがほしい。』



よく見ないとわからないくらい、小さな文字で。


子どもが七夕の短冊に書くみたいに、小さくて単純なお願い。


きっと気づかずに、明日の朝には捨てられるだろうなって、そんなことを思いながら。



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