たったひとつの恋をください

「で、どうする？」


君はそう尋ねたけれど、まるで答えはもうわかっているみたいな口ぶりだった。


「……行くよ。少し、時間かかるかもしれないけど」


ほんの少し、声が震えた。


伝わってしまっただろうか。君は敏感だから、少しの揺れすら感じ取ってしまったかもしれない。


「待ってるよ」


通話が切れてからも、私はしばらくケータイを握りしめたまま。じっと画面を見つめていた。


君と話していると、つくづく、思い知る。


やっぱり、私はバカで、どうしようもなく単純なんだって。



だってーー、



『待ってる』



たったそれだけの言葉だけで、こんなに嬉しくなってしまう。


たったそれだけで、さっきまで真っ暗闇にいたのに、もう起き上がっている。


自分の単純さに呆れつつ、やっぱり私は、また涙を流した。


心の中に溜め込んでいた色んなわだかまりがゆっくりと浄化されていくみたいに、泣いた後は、すっきりと晴れていた。