たったひとつの恋をください
ーーなのに、不思議だ。
きっと、見えているものは一年前も今も、そんなに変わらないんだろうけれど。
私の目には今、物が、人が、ちゃんと色づいて見えている。
たった一年で、世界はこんなにも色を変えるんだって、大げさな気もするけど、そんな風に思う。
そして、その景色の先にはいつだって君がいてーー
「あ、蓮っ!」
琴里が手を振って、呼ばれたその人が振り返る。
紺色のブレザーに、ブルーのネクタイ。まだ見慣れない冬服に、私は思わずドキッとする。
「どうした?」
「えーっと……あれ?なんだっけ?なんか言うことあった気がしたんだけどなあ」
「なんだそれ」
蓮が笑って、琴里も、私も一緒に笑う。
何気ない会話、他愛もない風景。
ーーこんな時間がずっと続けばいいな。
それが、今の私の一番の願いだった。