たったひとつの恋をください
でも、そんな子と太一が何を話してるんだろう?
そう思っていたら、太一が気まずそうに口を開いた。
「……ごめんな。俺今、誰とも付き合う気ないから」
相沢さんがぶんぶんと首を横に振る。
「いいの。知ってもらいたかっただけだから。よかった。気持ちだけでも伝えられて」
「うん。伝わった。ありがとう」
「これからも気まずくなったりしないで、友達でいようね?」
「それはもちろん」
一瞬だけ、相沢さんの顔がはっきり見えて、はっとした。
目が合ったような気がしたけれど、それは気のせいで、相沢さんはまた太一のほうに向き直る。
……あの子、泣いてた。
途端に、なんだかすごくいけないことをしているような気がして。
行こ、ととっさに琴里の手を引いて、でもなるべく音を立てないように、こっそりその場から離れた。