たったひとつの恋をください




女子しかいない家庭科室では、実習が始まったそばから、あちこちで楽しそうな恋の話が花咲いている。


誰かが誰かを好きとか、告白するとかしないとか。


文化祭前のお祭りムードで、みんな気分が盛り上がっているんだなって、ちょっと微笑ましくなったりする。


「ねえ、知ってる?願いが叶うおまじない」


同じグループの一人の子が、もったいぶるように人差し指を立てて言う。


「え、なになに?教えて」


「あのねーー」


同じグループになったのは普段そんなに個人的に話すことがなかった子たちで、だから私は調理に専念するふりをしながら、ひっそりと聞き耳を立てていた。



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